式(2)をコンピュータで数値積分させて,Poincaré写像によって,それが
写される固定点の様子を見てみる.周期外力を適当に設定して
1周期解を得ていることにしよう.
いま,パラメータ
のうち,
個の成分は固定し,残り1 つの
をオンラインで変化させているとしよう.
すると,さまざまな点列の性質の変化が観測されるに
違いない.これらは固定点の分岐現象と呼ばれる.
固定点の分岐は,以下の3つの条件で起こる.
- 接線分岐:固有値の1つがになる.
あるパラメータで突然,一つの固定点が別の位置にジャンプする.
(jump phenomenon).つまり軌道がそのパラメータで大きく形状を変える.
パラメータを逆方向に徐々に戻しても,ジャンプした
固定点は,すぐには元の位置に戻らないヒステリシス現象(histerisis phenomenon)
を示す.前節で説明した固定点追跡法では,この現象の近傍で式(14)
が非正則となるため,Newton 法がストップしてしまうであろう.
- 周期倍分岐:固有値の1つがになる.
この分岐はあるパラメータで固定点が2点に分かれる(period doubling).
解軌道は,二重にだぶったように見える閉曲線として観察される.
これは新たに安定な固定点が2つ生まれ,変化前の安定な固定点は,
変化後に鞍型点となっている.
固定点が2つになったのではなく,3つになったことに注意.
- Neimark-Sacker分岐:2つの固有値が複素共役となり,単位円を横切る.
この分岐では,ある安定な固定点が突然不安定化し,その周りに準周期解
による不変閉曲線が現れる.
この分岐が現れない系もあらかじめ知ることができる(後述).
さて,これらの分岐曲線を得たいとしよう.上述のどの分岐においても,以下の
解析方法は同じである.
固定点の性質は,あらかじめ固有値として与えることができるので,
次の連立方程式を解けば分岐点の精密な位置が分かる.
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(7.41) |
この式(41)の第1,2式は固定点である条件,第3式は
指定された固有値に対して特性方程式の値がゼロになる条件,
言い替えると,ゼロでない固有ベクトルがある条件を表している.
として,連立方程式を次の式でまとめる.
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(7.42) |
ここで
において,簡単に
行列式が展開できる:
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(7.43) |
分岐点のシューティングアルゴリズムとしては,前節と同様にNewton法を用いる.
式(13)を再掲する.
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(7.44) |
ここで
となっている.
この次近似におけるJocobi行列は,
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(7.45) |
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(7.46) |
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(7.47) |
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(7.48) |
となる.ここで
や
は,固定点追跡に
出てきた変分方程式の解を用いればよいと分かるだろう.すると
残りの
や,
2階偏微分のものはどうやって生成すればよいのだろうか.
まず,パラメータによる微分
は,
式(16)について,パラメータを含めた解を,
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(7.49) |
とすると,この式のパラメータについての微分は,
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(7.50) |
となる.これを式(16)に代入することにより,線形な
微分方程式,
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(7.51) |
を得る.
これについて,前節のようにでの値を数値的に解いてやればよい.
次に,二階の変数については,方程式(20)をさらに
に
ついて微分したものを考えるとよい:
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(7.52) |
もちろん,式中の
や
は式(21)を流用する.
下線部はテンソル積となって
複雑である.この式を第2変分方程式という.付録に第1,第2変分方程式に
ついてまとめた.
さて,この式(52)も同じく,での値を数値的に求める
ことができると,
Jocobi行列の要素が全て決定できるので,分岐点の精密な
位置が算出できる.
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User &
2017-09-07