3 平衡点解析

2階の常微分方程式の正規形は次の式で記述される:
\begin{displaymath}
\begin{array}{rcl}
\displaystyle \frac{dx}{dt} & = & f_1(x,...
...ip1ex}
\displaystyle \frac{dy}{dt} & = & f_2(x, y)
\end{array}\end{displaymath} (3.3)

いま,この系(3)が非線形常微分方程式で 記述されていたとする.式(3)の右辺に,時間関数がない場合を 自律系という.時間微分の項を 0とおいた方程式:
\begin{displaymath}
\begin{array}{rcl}
f_1(x, y) = 0\\
f_2(x, y) = 0
\end{array}\end{displaymath} (3.4)

は,系(3)の平衡点の座標を与える. もし平衡点が安定であれば,その近傍を初期値とする解軌道は, 過渡応答が終った後にその点に落ち着くであろう.

この平衡点がどのような性質を持つかを調べるには,平衡点の 安定性に着目すればよい.すなわち,平衡点の近傍において,平衡点の近傍 を初期値とする軌道が,平衡点に対してどう振舞うかを調べる. 時間の発展に応じて,軌道が平衡点に漸近していけば,その平衡点は 安定だとといえるだろう.この安定性の判別は, 式(3)を Taylor 展開したとき,その1次の項の係数行列である Jacobi行列の固有値を求める問題に帰着される.第6 節を参照.

さて,系(3)に周期外力が加わった場合, すなわち系(2)を考えよう. 実際に Runge-Kutta などの数値積分を用いて軌道を描かしてみよう. 系のパラメータを,できるだけ線形に近い状態にしておき, 任意の初期値から出発した解が,過渡応答を終え,安定平衡点に落ち着いている状態 にセットする.この状態で正弦波を入力し,その振幅を徐々に大きくすると, 安定平衡点まわりに周期解が発生する. この周期解は外力の周期に同期した軌道を描くであろう. このとき,系(3)の右辺には時間関数が加わり, 非自律系となる.

つぎに系のパラメータを徐々に変えていくと,解軌道が突如大きい振幅の軌道に 変化することがある.また,軌道が2重にダブりはじめたり, カオス状態と呼ばれる複雑な振動が見られたりと, さまざまな奇妙な現象が生じる.これらの現象を,周期解の分岐現象という. 以下では,周期外力の持つ性質を利用して,方程式を解析の容易な形に 変換する写像を考える.



User & 2017-09-07