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: 7 その他のスライド作成方法 : LATEXによるきれいなスライドの作り方 : 5 スライドの執筆


6 PDFの生成

LATEXコンパイラによって dvi ファイルの生成はできると 仮定しよう. dvi ファイルから PostScript に変換しておき, それから PDF を生成する方法が一般的である.

6.1 dvips(dvi2ps) + Distiller

dvips もしくは dvi2ps コマンドを用いて dvi から一旦 PostScript フォーマットのファイルを生成する. PDFへの変換は Adobe Distiller を用いる(多くの場合, このユーティリティは Adobe Acrobat に同梱されている). 現時点ではこの手法が品質のよいスライドを得る 手軽な方法である.

一般的には TEXでデフォルトで用いられる Computer Modern フォントを pkfont などのビットマップで もつことが多いだろう.それゆえ,dvips などの出力には Computer Modern フォントはビットマップが埋め込まれ, したがって Distiller はそれらイメージに対しては アンチエイリアシングを精密に処理できない. 段落モードでの英文等は, times.styなどの使用(もしくは \rmdefault を Type I PostScript フォントに再定義)によって改善されるが, 数式(Computer Modern Math)は相変わらず見栄えがよろしくない.

そこで \usepackage{type1cm} をプリアンブルで定義 すれば,PostScript バージョンの Computer Modern が 使用され,見栄えが劇的に改善する.

Distiller のデフォルトの設定は縦置き用紙になっている. このため,スライド作成専用のジョブオプションを作っておくと よいだろう.デフォルトの用紙サイズの縦横の値を入れ替える. (実際のところ,4:3のサイズであるスクリーンに適合させるには もうちょっと調整が必要に思う). また,Distiller はデフォルトでは画像はリサンプルして 画像の非可逆圧縮を図ろうとする.そこで,ジョブオプションでの 画質の調整においても,リサンプルをやめるよう設定しておけば, ファイルサイズは犠牲にするが,高品質な画像のスライドができる. (そんな苦労をしても,プロジェクタにつなぐコンピュータの方が フルカラーでなかったりして,徒労に終わる可能性もある).

6.2 dvips(dvi2ps) + ps2pdf

上記の Distiller の代りに ps2pdf ユーティリティを用いる方法である. ps2pdf コマンドは中身はシェルスクリプトであり,GhostScript エンジン にオプションを与え,出力を PDF に指定しているだけの話である.

この方法では日本語フォントのスクリーンフォントは,版権の 関係でフォントのヒント情報が取れず,したがって適当な サイズのビットマップフォントが拡大されて埋め込まれる.このため, 見栄えは非常によろしくない.VFlib を用いている場合は MS mincho などのフォントを指定しておかなないと,デフォルト では和田研フォントが拡大されて埋め込まれることになる. (和田研フォントが好き!という人もおられる…)

この方法によって得られる PDF と, Distiller や次の dvipdfm の PDF の差が気にならない, もしくは判らない,という人もたまにおられる. そういう人はここに書いてある記事は不要であろう.

6.3 dvipdfm

dvipdfm は dvi ファイルから PostScript ファイルを 経由することなく PDF ファイルを生成するユーティリティである. ps2pdf のスクリーンフォントの品質問題は, この dvipdfm ですっかり解決される. hyperref.sty を用いることによるPDF上の hyperlink も実現される.

ただし,prosper.cls を用いて生成された dvi は PDF には変換できないようである. これは Prosper が内部で seminar.cls を読み込んでいるかららしい.

dvipdfmは,第7.1節に述べている slides.cls を用いたスライド作りの際には利用できる.



Tetsushi "Wahaha" Ueta 平成18年9月30日