1 はじめに

常微分方程式で記述される力学系にみられる周期解が,式のパラメータによって 軌道の位相的性質を変える現象を分岐現象といい, それら周期解の位相的構造を知るために,パラメータ空間での 分岐図を得ることは本質的に重要である.

しかし,昔はこの図の作成にかなりの困難を強いられたそうである. 分岐点を位相平面でまず見つけ,そこから微小にパラメータを変えて分岐曲線を トレースしてゆくという試行錯誤の繰り返しであった.

現在は,以下に述べる系統だった解析方法が 確立されている[1][2].対象となる 方程式と変分方程式さえ修正し,適切な初期値を投入すれば, コンピュータが自動的に分岐図を作成してくれる. 最近はコンピュータの性能も上ったので,昔で1 年がかりだった仕事も, 今では数時間のオーダーで仕上がる. まさに CAE(Computer Aided Engineering)の醍醐味である.

ところで,コンピュータが勝手にトレースしてくれると言っても, その原理の理解なしでは,プログラムに与えるべきデータも見当が付かないし, 出てきた結果に対しても十分な説明はできないのではないだろうか. また,アルゴリズムの拡張も容易ではないであろう.

さて,本稿では 2 次元非自律系を例にとり, 分岐曲線のシューティングアルゴリズムをまとめてみた. 学術論文では implicit だった部分を特に分かりやすく書いてあるつもりである. 中核となる数値計算も,Runge-Kutta 法と Newton 法だけであり, 初等的な数値計算法の関する本の内容で十分カバーできる. そこで,多少時間がかかってもよいので, ぜひ原理を理解し,コーディング内容を検討する訓練をしてほしい. その経験が,後の非線形現象解析の助けになると確信している.



User & 2017-09-07