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遺伝情報翻訳過程における双安定スイッチ機構の研究

ERATO/東京大/理研との共同研究です. ここはもう軽くアブストラクトの御紹介:

近年細胞内にスイッチを人工的な遺伝子ネットワークを用いて構築する研究が行われている.Gardnerらによって,数理モデルを基にして構築された人工遺伝子スイッチは,実験の予測とよく一致する人工遺伝子スイッチのシステムの振る舞いを示すこと,すなわち,遺伝子スイッチが細胞内で安定に動作しうることが確かめられている.しかし,細胞内の状態は必ずしも定常ではなく,細胞内状態の変動などによって細胞内ネットワークパラメータは変動する.

この細胞内の状態の変化が,遺伝子ネットワーク,特に遺伝子スイッチの安定性に与える影響は,実験的にも数理的にもまだ十分に評価されておらず,細胞内ネットワークの安定化のための特殊なメカニズムの存在や必要なパラメータ条件については解明されていない.

本論文では,ネットワークパラメータが周期的に変動する細胞内状態における人工遺伝子スイッチの安定性の変化傾向を,分岐理論を用いて調査した.具体的には,まず提案遺伝子スイッチモデルの安定性を調べるため,その分岐図を計算した.その結果から,2つの遺伝子の対応するパラメータ値が近いと双安定,遠いと単安定になることが確かめられ,すなわち,安定性を保持するための遺伝子のパラメータのバランスが数値的に求められた.

次に,細胞内の状態の変化が遺伝子スイッチの安定性に与える影響を調査するため,遺伝子スイッチモデルに周期外力を加えたモデルを提案し,その分岐図を求め,提案遺伝子スイッチモデルの分岐図との構造の比較を行った.その結果,外力を加えたモデルの方では安定なパラメータ領域が狭くなる傾向が確かめられた. この事から,細胞内においては振動を加えることにより遺伝子スイッチの安定性が低くなることが数値的に実証された.また,同じ条件下で振動を大きくする実験を行ったところ,外力の振幅を大きくすれば,安定性はさらに低くなるという結果が得られた.これらの実験を基に,外力の振幅と振幅に関する安定領域範囲の変化をもとめ,系の外力応答を完全に計算した..これらから,安定な領域の面積が急激に変化するパラメータ範囲が存在することが分かった.



Contact address: ueta @ tokushima-u.ac.jp